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この項目では、伝承上の鬼について説明しています。その他の用法については「鬼 (曖昧さ回避)」をご覧ください。

「鬼退治」はこの項目へ転送されています。1971年に放送されていたテレビドラマについては「鬼退治 (テレビドラマ)」をご覧ください。
鬼を撃退するためにタントラを唱える空海を描いた葛飾北斎 (1760?1849) の肉筆画。曾我蕭白《雪山童子図》(鬼)(1764年)。鳥山石燕今昔画図続百鬼』より「鬼」鬼山地獄の赤鬼像/別府温泉大分県別府市所在)の一角をなす鬼山地獄に所在。追儺の鬼/兵庫県三木市の蓮花寺にて。

鬼(おに、英語: Oni)は日本妖怪民話郷土信仰によく登場する。

日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「大きな」「物凄い」といった意味の冠詞として使われる場合もある(鬼 (曖昧さ回避)も参照)。「?の鬼」といった用法も見られる。
概要

現在、一般的に描かれる鬼は、頭に2本、もしくは1本のが生え、頭髪は細かくちぢれ、口にが生え、指に鋭いがあり、の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。

肌の色はの5色で、「青鬼(あおおに)」「赤鬼(あかおに)」「緑鬼(みどりおに)」「黄鬼(きおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。この5色は五行説五蓋説が組み合わさったものと言われ、木+瞋恚蓋=「青(鬼)」、火+貪欲蓋=「赤(鬼)」、土+掉挙蓋=「黄(鬼)」、金+睡眠蓋=「緑(鬼)」、水+疑蓋=「黒(鬼)」になったとされる(本来五行説の金に対応する色はであるが、五蓋説と結びついた際に緑に変じたという)[1]

鬼は、地獄において閻魔王の元で亡者を責める獄卒としての鬼のイメージが現在もよく知られている。鬼は「○○童子」と名付けられる場合があった。これには「酒呑童子(しゅてんどうじ)」の名で呼ばれる大江山の鬼が最もよく知られている。

今でも、日本の山や山地には、「かつて鬼が棲んでいた」という伝説で彩られたものが少なくない。

現在、「悪い物」「恐ろしい物」の代名詞として使われることの多い「鬼」という語であるが、例えば、鳥取県伯耆町(旧・日野郡溝口町)では、村を守った「強い物」として鬼を崇めていたり、青森県岩木山では鬼の善行に感謝して、神社の「」として鬼を祀っているなど、これらのほかにも日本の各地には鬼を善的に捉え、また、畏敬の念で見ている例が少なくない。節分豆まきに見られるように、鬼が厄災をもたらすとする信仰も根強いが、まったく逆に、鬼が悪霊を追い払い、人に幸福をもたらしてくれる存在と考えている例も少なからず見られる[2]

一方、中世能楽の世界では、鬼を人の怨霊と化したものか、地獄のものとする例が多い。昔話の中の鬼は、一種の英雄のなかで定型的に懲らしめられる悪者の役を負わされていることが多い。鬼が悪者であったとする現代の鬼の一般的イメージは、ここから広まった部分が大きいともいわれる[2]

以上、日本の鬼は「悪」から「善」や「神」まで多様な現れ方をしており、特定のイメージで語ることは困難である。単純に悪者とはできない。ただ、「怖ろし気」「力強く」「超人的」のイメージは多くの鬼に共通しているようである。
諸説

文芸評論家の馬場あき子は5種類に分類している[3]
民俗学上の鬼で祖霊や地霊。

山岳宗教系の鬼、山伏系の鬼、例:天狗

仏教系の鬼、邪鬼、夜叉羅刹

人鬼系の鬼、盗賊や凶悪な無用者。

怨恨や憤怒によって鬼に変身の変身譚系の鬼。

「鬼」(キ) という漢字の原義は「死者の魂」である。例えば、餓えた死者の魂を「餓鬼」、死者の魂が泣き喚くことを「鬼哭」という。現代日本語の「オニ」も、「鬼」の原義である「死者の魂」として用いられる例もあり、海外で死ぬことを「異国の鬼となる」「異境の鬼となる」と表現する。

馬場によれば、元々は死霊を意味する中国の鬼が6世紀後半に日本に入り、日本に固有で古来の「オニ」と重なって鬼になったという。ここでいう「オニ」とは祖霊であり地霊であり、「目一つ」の姿で現されており、隻眼という神の印を帯びた神の眷属と捉える見方や、「一つ目」を山神の姿とする説(五来重)もある。いずれにせよ、一つ目の鬼は死霊というより民族的な神の姿を彷彿とさせる。また、『日本書紀』にはまつろわぬ「邪しき神」を「邪しき鬼もの」としており、得体の知れぬ「カミ」や「モノ」が鬼として観念されている。説話の「人を食う凶暴な鬼」のイメージは「カミ」、「モノ」から仏教の獄鬼、怪獣、妖怪など想像上の変形から影響を受けて成立していったと言える。平安の都人が闇に感じていた恐怖がどのようなものかが窺える[3]

また、大東文化大学講師の岡部隆志によれば、鬼とは安定したこちらの世界を侵犯する異界の存在であるという。


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